被害者 積水ハウス株式会社の、地面師による詐欺事件(H30.10.26更新)

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不動産の売買でだまされた!

この事件は、いつもの「さいきのワイドショー」とは、ちょっと違って、
「法律では、こうなんですよ」という話では、ありません。

しかし、不動産の売買という、司法書士が大きく関係する仕事で、このような大事件が起きて、日本中の司法書士が、ビビりました。

また、ニュースを読むと、登記の専門用語が出てきて、不動産の売買について、よく知らない人には、意味がわからないニュースだったかもしれません。

そこで、今回は、ニュースの解説と、不動産の売買のとき、どのようなことが行われるかを、みなさんに知ってもらいたいと思います。

なお、このページは、とても長いです。(そんなつもりは、なかったのですが)

目次を付けたり、リンクも、たくさん付けましたので、最初から順番に読もうとせず、わからないところや、興味があるところから、トビトビしながら読んでもらえると、うれしいです。

もくじ

事件の説明
***何があった?(1) 売買の約束
***何があった?(2) 仮登記とホンモノの登場
***何があった?(3) 売買の完了
***何があった?(4) 事件の後
わからないこと
***わからないこと① 地面師って、なに?
***わからないこと② S社は、なぜ、だまされた?
***わからないこと③ 仮登記って、なに?
***わからないこと④ ホンモンが気付いた。S社はムシした
***わからないこと⑤ 司法書士の仕事
***わからないこと⑥ 権利証は?
***わからないこと⑦ 司法書士も、ダマされた
***わからないこと⑧ 司法書士がダマされた、2つ目の理由
***わからないこと⑨ 法務局は見破った
***わからないこと⑩ 逮捕容疑がの意味が、わからない
これから、どうする?
***これから、どうする?<1> ICチップの読み取り
***これから、どうする?<2> ICチップのない証明書
***これから、どうする?<3> 電子署名
***これから、どうする?<4> みなさんの協力が必要
まとめ

何があった?(1)売買の約束

ある日、積水ハウス株式会社に、
「この土地を買いませんか?」という人が、やって来ました。

(「積水ハウス株式会社」と書くのが面倒くさいので、これからは「S社」と書きますね。)

その土地は、とても広くて、良い場所にあり、みんなが欲しかった土地なのですが、今まで、だれにも売ってくれなかった、すばらしい土地です。

S社は大喜びして、売りにきた人に「買います!」と約束しました。

しかし、売りにきた人は、実は、その土地の持ち主ではない、ニセモノ( 地面師 )でした。

S社は、いちおう、あなたはホンモノですか?という確認をしました。
すると、少し、おかしなところはあったものの、うまくごまかされて、 S社は、ホンモノだと思いました。

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何があった?(2)仮登記とホンモノの登場

S社とニセモノは、「売買の約束をしました」という「 仮登記 」を、法務局にしました。

仮登記がされたことを知った、ホンモノの土地の持ち主は、ビックリしました。
「え! 私、土地を売ってないよ!」

ホンモノの持ち主は、S社に言いました。
「売ったのは私じゃない! ほら、権利証は私が持っているでしょ? 売った人は、ニセモノだ!」

しかし、S社は、こう思いました。
「この土地を欲しかったのに、買えなかった人たちが、くやしくて、いやがらせをしているのだろう。」

ホンモノの持ち主は、何度も、「おかしい!」と言いましたが、S社は、何もしませんでした。

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何があった?(3)売買の完了

約束の日に、S社は、ニセモノに、土地の代金として、何十億円というお金を払いました。

そこには、登記を担当する司法書士もいて、ニセモノに、あなたはホンモノですか?と、確認をしました。

しかし、ニセモノは、ニセモノの書類を用意してきて、それを見た 司法書士は、書類がニセモノだと、気付きませんでした。

司法書士は、「売買が完了しました」という登記をするために、ニセモノの書類を、法務局に提出しました。

すると、 法務局は、書類がニセモノだと気付き、 「こんな登記は、できません」と言いました。

そこで初めて、S社や司法書士は、「だまされた!」と気付きましたが、もう遅い。
ニセモノは、お金を持って逃げてしまいました。


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何があった?(4)事件の後

最近、犯人のうちの何人かは、 偽造有印私文書行使 と、 電磁的公正証書原本不実記録未遂 の罪で、逮捕されましたが、犯人のボスは、外国に行って、まだ逃げているそうです。

犯人が全員逮捕されたとしても、犯人がもう、お金を使ってしまっていたら、S社は、返してもらうことができません。

もちろん、民事裁判で損害賠償請求をしたら、「犯人はS社に、何十億円、払いなさい」という決定はされるでしょう。
しかし、そんな大金、犯人が一生働いたお金を全部払っても、払い切れません。

S社は、何十億円ものお金を払ったのに、土地は手に入らず、お金を返してもらうこともできず、もう、泣くしかありません・・・。

このような事件は、あまり聞かない話ですが、過去にも、何度かあった事件です。
もう二度と事件を起こさないために、私たちは、 新しい方法を考えなければいけません。

私が考える方法は、次の3つです。
① 免許証やパスポートの、ICチップを利用する。
② 電子署名を利用する。
③ みなさんのご協力

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わからないこと① 地面師(じめんし)って、なに?

不動産を使って、詐欺(さぎ)をする人のことです。
「○○罪」のような、法律の正式な言葉では、ありません。
誰かが作った、あだ名です。

今回の事件のように、
「他人の不動産を、ホンモノの不動産の持ち主になりすまして、買った人からお金をもらって、逃げる。」人です。

不動産と言えば、建物もあるはずですが、なぜ「地面」なのでしょうか?

建物は、相手に「家の中を、見せてください」と言われれば、ニセモノは家の中に入れないので、建物を使って詐欺をする人は、いないのかも、しれませんね。

別に、知らなくても、困らない言葉です。
たぶん、どんなテストにも、出ません。

ところで、昔、地面師だった、という人に取材をして、
「登記の記録が、昔はコンピューターに入ってなくて、手で書いていた時代には、こういう方法を使って、あーして、こーして、犯罪をしたものだ。」
というのを、詳しく説明したニュースを見かけました。

今の登記の記録は、全部、コンピューターに入っているので、ニュースの方法は、絶対に使えません。
その方法と、今回のS社の事件を、一緒にニュースにして、何が言いたいの?
登記のことを、よく知らない人たちを、いらない情報で、混乱させないで欲しいです。

それに、その方法は、「ナニワ金融道」という、有名なマンガに、書いてあるし・・・。

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わからないこと② S社は、ニセモノだと気付けなかった

S社は、ニセモノが用意したパスポートを見ながら、
「あなたの誕生日は、干支は?」
などを聞くと、ニセモノは、まちがえたそうです。

しかし、「最近、もの忘れが多くて~」とでも、言ったのでしょうか?
うまくごまかされて、S社は、「まあ、いいや」と思ったそうです。
(ニセモノが、何と言ったのかは、ニュースに出ていないので、わかりません。)

ここで、みなさんは、
「いや、もっとツッこめよ!」と思ったでしょ?


でもね、不動産の売買って、食品や電気製品などと違って、
「また今度、買えばいいや」とか、
「他のところで、同じものを、買えばいいや」とか、
できないものです。

似たような場所に、似たような大きさの土地が、いっぱいあったら、
「どれでもいいや」
「また、今度でもいいや」
と思うかもしれませんが、そんなこと、まず、ありません。

新しくできたニュータウンなら、似たような土地がたくさん売っていますが、
「角の家がいい」とか、
「坂の下の方がいい」とか、
やっぱり、あるでしょ?

さらに
今回の土地は、欲しい人がいっぱいいたのに、誰も買えなかった、とっっっても貴重な土地なんです。
こんなチャンスは、二度とありません。

持ち主を怒らせて、
「もう、いいよ!」
「売るの、やめだ!」
と言われては、絶対にダメです。


コンビニなどで、
「お酒を買うなら、20歳以上というボタンを押してください」
「免許荘を見せてください」
と言われただけで、うるさい!と怒る人もいるぐらいです。、

「あなた、ホンモノですか?」
「もっと色々、聞いていいですか?」
とか言われて、もし、ホンモノだったら、あなたでも、怒るでしょ?

よっぽど、ヘタクソな言い訳をされたり、ニセモノだ!という証拠があったら、別ですよ。
でも、証拠もないし、警察でもないのに、いっぱい調べられないのは、無理もないと、私は思います。

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わからないこと③ 仮登記って、なに?

「仮登記って、なんだ?」と思った人は、多いでしょう。
これは、「不動産を買う、整理券を取る登記」です。

とても人気のゲームなどが発売されたら、整理券が配られます。
1番の券を持っている人は、もし、待っている列に、誰かが割り込んできても、1番に買えるので、「後から来た人が、先に買ったので、自分は買えなかった」ということが、ありません。

不動産も同じです。
ニセモノは、
「この土地は、他にも欲しい人がいるから、S社がいらないなら、別にいいよ~」
とか、言っていたそうです。

せっかく売買の約束をしたのに、
「やっぱり、別の人に売ることにしたわ。バイバ~イ」
とか言われたら、大変です。

そこで、S社は、
「別の人と約束したとしても、オレが先だ!」という、登記をしたわけです。

この仮登記、みなさんが家を買うときも行われるか、というと、ほとんど行われません。
買う人が「やってくれ」と言ったら、もちろん、できますが、普通、「他の人に売られるかも!」とか、考えないでしょ?

S社が、この登記を行っていることからも、
「よっぽど貴重な土地で、絶対欲しかったんだな~。」
ということが、わかります。


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わからないこと④ ホンモノが気付いた。S社は無視した。

最初に言っておきます。
この、「わからないこと③」は、私も、わかりません。

ホンモノの持ち主は、登記の記録を見て、「変な仮登記がされてる!」と、気付いたそうです。
でも、なぜ、登記の記録を見たのでしょうか?
法務局は、登記をしても、持ち主に「登記しました」という電話をしたり、郵便を送ったりは、しません。
登記の記録は、自分で取り寄せないと、誰かが教えてくれることは、まず、ありません。

みなさん、自分の家が「ちゃんと自分の家のままに、なっているか?」と心配して、1年に1回、登記の記録を取り寄せたり、しますか?

買ったときから、一度も見ていない、という人が、ほとんど(全員?)ではないでしょうか。
(私も、一度も見てません。)

ホンモノの持ち主が、なぜ、登記の記録を調べたのか?
たまたま、とも考えられますが、
「何か、自分の土地が盗られるような、あやしい動きを知っていた」
とも考えられます。
一体、何があったのでしょう?

そしてS社は、ホンモノからの手紙を、全部無視したそうです。
これも不思議です。
電話だったら、イタズラ電話かな?とか思います。
でも、内容証明という、スーパー正式な郵便で、おかしい!と伝えられたそうですから、それを無視するというのは・・・?

これも、ニセモノに「きっとイヤがらせがあるから、気を付けろ!」とでも言われて、だまされたのでしょうか。
それとも、何十億円の売買をする、大きな会社では、イヤがらせが、当たり前なのでしょうか?

そんな大きな会社の登記を、担当したことがない、小さな私には、ぜ~んぜん、わかりません(泣)

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わからないこと⑤ 司法書士の仕事

お金を払う、もらう場所には、必ず、登記を担当する司法書士も、一緒にいます。
そこで、きちんと売買が完了したことを、司法書士の目と耳で確認してから、法務局に、登記を出しに行きます。

不動産を売ったり買ったり、したことのある人、
「司法書士のあんた、半分ぐらい、ボーっと座ってるだけじゃん。もう帰れば?」
とか思った人は、いませんか?
私たちは、ジロジロ見ているのが、仕事です。

「お金を払ったのに、自分の登記にならなかった!」
「お金をもらってないのに、相手の登記にされた!」
ということが、ぜぇ~ったいにないようにするのが、司法書士の最大の仕事です。
専門的な書類が作れる、というのは、実は、3番目ぐらいです。

で、その確認のときに、「来ている人と、書類は、ホンモノか?」という確認もします。

どうやるかと言うと、
「免許証やパスポートなどの書類」
「登記の記録」
「印鑑証明書」
「印鑑」
これらが、すべて一致しているかで、判断します。
あれ? 権利証は?

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わからないこと⑥ 権利証は?

ニュースを見た人の感想で、一番よく聞くのは、
「なんで、権利証はホンモノの持ち主が持っているのに、登記ができるんだ?」
というものです。

実は、権利証は、無くても登記できます。
(ただし、余計な時間やお金がかかるので、「無くてもいいですよ」というわけでは、ありません。)

本当に無くしてしまったり、災害でボロボロになったりしたら、その不動産には、永久に登記できない、というのでは、おかしすぎるからです。

権利証の代わりとなる書類は、司法書士が作ります。
それには、権利証がない人の免許証や、パスポートなどのコピーを付けます。

今回の事件では、法務局が、パスポートなどを見て、ニセモノに気付いたそうです。
権利証なしで登記したのか、権利証もニセモノを作ったのかは、ニュースに出ていませんが、もし、権利証があったら、パスポートのコピーを出す必要がありません。

このことから、今回は、権利証なしで登記する方法が悪用されたことが、わかります。

(追加記事)
この記事を書いた後、
「公証役場で本人確認をして、書類を作ってもらった」
という、ニュースを見かけました。

それだったら、
司法書士が権利証の代わりとなる書類を作る必要もないわけで、
パスポートのコピーを、法務局に出す必要もないわけで、
じゃあ、法務局は、何を見て、ニセモノだと気付いたんだ? となるわけで、
う~ん。情報が混乱しているのかなぁ。

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わからないこと⑦ 司法書士も、だまされた

「わからないこと④」に書いたように、司法書士も、パスポートや印鑑証明書などを、見ているはずなのに、ニセモノと気付けなかったそうです。

さて、なぜか?

詳しいことは、ニュースに出ていないので、わかりませんが、私の予想では、パスポートだけ、うまくニセモノを作れば、あとは、何とかできると思います。

ニセモノが持っているハンコを、「これ、私(ホンモノ)のハンコだよ」と言って、市役所をだませば、そのハンコは、ホンモノとして市役所に登録されます。
すると、出てくる印鑑証明書は、ホンモノです。
司法書士は、登記の記録と、印鑑証明書と、ハンコを、よ~く見ますが、
印鑑証明書とハンコは、ホンモノなわけですから、見破れるわけが、ありません。

仮登記のときにも、印鑑証明書は、法務局に提出したはずです。
今回、見事にニセモノを見破った法務局が、仮登記のときには見破れなかったことからも、印鑑証明書は「ニセモノが作ったホンモノ」だったのでは、ないでしょうか。

なお、仮登記のときには、権利証は提出しません。
仮登記は、整理券を取る登記であり、正式に「売買しました」の登記ではないので、「正式な審査は、正式な登記のときに、やります。」となっています。)


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わからないこと⑧ 司法書士が見破れなかった、もう1つの理由

司法書士も、「わからないこと①」に書いた、S社が見破れなった理由と、同じ気持ちがあります。

証拠もないのに、司法書士が、
「何か、おかしい気がする・・・」
と思って、パスポートをジロジロと、何十分も見ていれば、

「もういいよ! 私、帰る!」
と、言われるかもしれません。

売買ができなくなった後、パスポートがニセモノだとわかったら、S社からはお礼のお菓子が、司法書士会からは表彰状がもらえるかもしれません。

でも、やっぱりホンモノだったら、S社から、
「お前のせいで、大事な仕事がダメになった! どうしてくれるんだ!」
と、言われるでしょうね。

「土地を買って、マンションでも建てて、S社は何百億円も、もうけるはずだったのに!」
と言われて、司法書士に対して、この 逸失利益の損害賠償請求 を、されるかもしれません。

何百億円の損害賠償請求をされたら、私は、一生払えないどころか、1,000年ぐらい先の子孫まで、払っていそうです。

この記事を読んで、「だから、司法書士は悪くない、って言いたいの?」と思った方がいたら、すいません。

そうではなくて、この後、「これから、どうしたらよいか?」を考えるには、この理由を無くす方法も、考えないといけないからです。


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わからないこと⑨ 法務局は、見破った

みなさんは、「法務局は見破ったんだから、S社や司法書士は、よく見てなかったんじゃないの?」と、思われていることでしょう。

そうかも、しれません。
もし、そうだったら、私も、司法書士として、詫びするしかありません。

ただ、言い訳かもしれませんが、法務局が、この不動産だけを、特別に注意していた、という可能性も、考えられます。

なぜかと言うと、「ホンモノの持ち主が、私は知らない!と、何度もS社に言った」からです。
ニュースに出ていないので、わかりませんが、S社に何度も言ったぐらいの人ですから、警察や法務局にも、言いに行ったかもしれません。

法務局は、権利証が盗まれた人のために、
「私の権利証が出されたら、それを出した人は、私じゃありません! 盗んだ人です! 登記しないで!」
と言ってきた人と、不動産を、記録しています。

もし、ホンモノの持ち主が、法務局に相談に行ったとしたら、法務局で、
「この不動産の登記が出たら、気を付けろ!」
という準備ができていた、という可能性があります。


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わからないこと⑩ 偽造有印私文書行使と、電磁的公正証書原本不実記録って、なに?

偽造有印私文書行使(ぎぞう ゆういん しぶんしょ こうし)
これは、漢字を見れば、何となく、わかりそうですが、
「偽造有印」「私文書」「行使」では、ありませんよ。
「偽造」「有印私文書」「行使」です。

「有印私文書」ハンコのある、きちんとした書類を、
「偽造」ニセモノを作ったり、修正したり、ウソを書いたりして、
「行使」他人に渡した。
ということです。

「偽造有印」だったら、「ニセモノのハンコ」となって、
「ハンコがホンモノなら、書類はウソでもいいのか!?」
と、なりますからね。

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電磁的公正証書原本不実記録
でんじてき こうせいしょうしょ げんぽん ふじつきろく
こんなに漢字ばかりの、長い単語が、他にあるでしょうか?
500年後の歴史のテストに出てきて、子供たちが困りそうな名前です。

「電磁的」コンピュータに入っている、
「公正証書」国や市町村の文書の、
「原本」コピーではない、基本となるものに、
「不実」真実ではないこと(ウソ)を
「記録」書く。
ということです。

今回の事件では、
「ニセモノが、ホンモノの名前を書いた書類を、S社や司法書士に渡した」
ことが、偽造有印私文書行使で、
「その書類を法務局に提出し、国の記録に、ウソを書かせようとした
ことが、電磁的ワーキャー未遂(みすい)です。

法務局は、ウソの記録を書く前に、ニセモノに気付いたので、「書いた」ではなく、「書かせようとした」なんですね。

ここで、「法務局に書類を出したのは司法書士なのに、司法書士は罪にならないの?」と思った方は、いますか?

司法書士は、「売ったり、買ったりした人に、任された人」です。
だから、司法書士がウソを書かない限り、罪にはなりません。
また、ニセモノが「法務局に出したのは、私じゃない!」と言っても、「任せた人」ですから、罪になります。

もう1つ、「この事件って、詐欺じゃないの?」と思った方も、多いと思います。

そうですね。
とりあえず、この犯罪をしたことは、まちがいない!と証拠がある、偽造有印アーの罪と、電磁的イーの罪で、逮捕しただけでしょう。
この後、警察の取り調べによって、詐欺の証拠も出てきて、詐欺罪で再逮捕されると思います。

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これから、どうする?<1> ICチップの読み取り

ここまで、長々と、「何があったんだ?」「誰が、ミスったんだ?」
ということを書きましたが、
一番考えなければいけないのは、
「これから、どうするんだ?」
ですよね。

S社も、司法書士も、公証役場も?、パスポートがニセモノと見抜けなかったわけですが、それを、見た目だけで見破るのは、よっぽどヘタクソに作られてない限り、無理です。

ちょっと色がおかくしても、「置いていた場所が悪くて、ハゲちゃって~」と言われたり、
ちょっと文字がおかしくても、「水をこぼして、にじんじゃって~」と言われたら、
「ウソでしょ!」と言える証拠が、ありません。

そこで、車の免許証、パスポート、マイナンバーカードには、カードの中にICチップが入っていて、それを読み取ると、住所・名前・誕生日などが、書かれているそうです。

このICチップは、ニセモノを作るのが不可能と言われいるので、どんなにきれいなニセモノのカードを作っても、ICチップを読み取れない、または、全然ちがう情報が書かれていたら、すぐにニセモノと、わかります。

これはカンタン。すぐにできそうです。

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これから、どうする?<2> ICチップのない証明書もある

問題は、車の免許も、パスポートも、持っていない人は、たくさんいることです。

そのような方には、医療保険の保険証や、運転免許を返した方が持っている「運転経歴証明書」で、本人確認をするのですが、これらのカードには、ICチップが入っていません。

マイナンバーカードは、どうでしょう?
マイナンバーの数字は、日本に住む人の全員に通知があったので、全員知っているはずですが、カードは、自分で作りに行かなければ、発行されません。
だから、マイナンバーカードを持っている方は、少ないんじゃないですか?
(私も、持っていません)

免許もパスポートも持っていない人に、用事もないのに
「免許を取ってください」
「パスポートを作ってください」
とは、言えません。

マイナンバーカードも、市役所などに取りにいかなければいけない上、お願いしてから、カードができるまでに、1ケ月ぐらいかかります。
売買の日は、相手の都合もあるので、そう簡単に変更することは、できません。
カードを作ってと、お願いしても、間に合わないことも、あるかも。

また、免許のICチップを読み取るには、暗証番号が必要です。
5年ぐらい前、免許の更新のときに、急に「暗証番号決めろ」と言われた番号、みなさん、覚えてますか?
忘れた人も、多いのではないでしょうか。

暗証番号を忘れてしまって、ICチップが読みとれなかったら、
「じゃあ、売買できませんね。また来週~。」
なんてこと、とても言えません。

たぶん、その場にいる、売る人・買う人・不動産屋さん・銀行、全員が「ふざけるな!」と言うでしょう。
売買の日が変わるというのは、それぐらい、大変なことなのです。

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これから、どうする?<3> 電子署名

この方法は、ICチップを読み取るのと、あまり変わらないので、良い方法とは言えませんが、100年後には常識になっている方法かもしれないので、お勉強しましょう。
(え、勉強しても、100年後には、もういないって?)

今は、紙にハンコを押す方法が常識ですが、
「紙が、もったいない」
「紙を渡すには、持って行ったり、郵便で送ったり、大変」
「紙が増えてくると、片づけるのが大変」
ということで、パソコンのデータだけで、文書を記録したり、相手に渡したりする方法が、最近は増えています。

じゃあ、パソコンの中にある紙(データ)に、どうやってハンコを押そうか? となります。
(ハンコの画像が貼りつけてあっても、画像は、ニセモノ作りがカンタンすぎて、信用できません。)

そこで考えられた方法が電子署名(でんし しょめい)です。

電子署名は、例えるなら、シャボン玉です。

シャボン玉には、住所や名前が書いてあって、あなたと同じシャボン玉を持っている人は、誰もいません。

あなたが、紙の内容を内容を、しっかり確認したら、紙を、あなたのシャボン玉で、包みます。

紙に書いてあることを書き換えるには、シャボン玉を割るしかありません。
割ったら、シャボン玉は、消えて無くなります。

シャボン玉を割って、書き換えることは、カンタンにできます。
しかし、あなたのいないところで、あなたのシャボン玉で包み直したり、割ったシャボン玉を、元に戻すことはできません。

だから、あなたのシャボン玉で包まれていない書類は、あなたの確認ができていない、ということで、ハンコを押してない書類と同じように、信用できない書類と見られるのです。

電子署名は、少しでも書き換えようとすると、修理して元に戻すことができない、消えて無くなる、というのが、ポイントです。
だから、例えを、サランラップにせず、シャボン玉にしました。
わかりやすかったかな?)

遠いか近いか、わかりませんが、未来には、ペンも紙もハンコも無くなって、全部、パソコンで記録&電子署名、となるでしょう。
(トイレの紙は、どうしようか)

でも、今、電子署名を持っている人は、たぶん、ほとんどいません。

持つ方法はいくつかあって、一番カンタンなのは、マイナンバーカードに、この機能を付けることですが、自動的に付いているわけでは、ありません。

マイナンバーカードを作るときに、「電子証明の機能が欲しい」と言って、手数料500円を払います。
(もう、持っているカードに、後から付け足すこともできる)

と言っても、そもそも、「これから、どうする?②」に書いたように、マイナンバーカードを作ろうとする人が、まず、少ない・・・

マイナンバーや、ICチップは、国が作って、国が「もっと利用しなさい」と言っています。
だったら、電子署名付きのマイナンバーカードを、「希望する人には作る」じゃなくて、全員に配って欲しいものです。

と言っておいて、すいまんせが、とつぜん、電子署名を使いたいと言われても、外出先で電子署名ができる用意をしていません。
使いたい方は、前もって連絡してください。

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これから、どうする?<4> みなさんの協力が必要

結局、電子署名がほとんど使われていない今の時代では、ICチップの読みとりしか方法がないと思います。

そうすると、
・ICチップ付きのカード持っていない人、
・暗証番号を忘れた
・持ってるし、覚えてるけど、ICチップの読み取りすら、ほとんど(ぜんぜん?)行われていない今の時代に、読み取らせてと言われて、気分が悪い
の問題があります。

このような人たちに、
・マイナンバーカードを作ってください。
・警察に行って、暗証番号を聞いてきてください。(教えてくれるそうです)
・絶対に必要な確認なんです。
と言って、それは当然だと、納得してもらえる世の中が必要です。

S社の事件でも、S社がマジマジとパスポートを確認しなかったのは、お客様は神様で、何でもハイハイと言うことを聞かなければならない、という、日本の文化も、原因かもしれませんね。

だから、S社や司法書士は悪くない、日本の文化が悪い、と言いたいのでは、ありません。

みなさんが、このような事件に巻き込まれないために、司法書士が
「え!?今までそんなこと、聞いたことない」
ということを、言うかもしれませんが、ガマンしてくださいね、
ということです。


今の私には、ICチップを読み取るパソコン環境がないので、早く何とかしたいと思います。

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まとめ

①  見た目だけで、 ニセモノを見破るのは、ほとんど無理。
②  不動産が盗られるかも、と思ったら、一番に 法務局に相談を。
③  権利証を持っていても、不動産は大丈夫ではない。
④  ICチップで本人確認 の時代が、もうすぐ来る。
⑤ ハンコが無くなり、電子署名 の時代が、たぶん来る。
⑥  全国の司法書士が、ビビっています。

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